KOEI乳酸菌

大豆由来乳酸菌発酵成分の脂質吸収抑制作用

乳酸菌生産物質が選ばれる「理由」7

脂質や糖質の過剰摂取に陥りがちな現代の食習慣において、大豆由来の加工食品や成分がもたらす有用な働きとその可能性について、東京海洋大学准教授の小山智之先生に解説していただきます。

現代の食習慣と特定保健用食品

食事由来の脂質や糖質は私たち人間を含む哺乳類にとっては、重要なエネルギー源でありますが、現代の私たちの食習慣では過剰摂取になりがちです。また、継続的な脂質や糖質の過剰摂取はメタボリックシンドロームと呼ばれる体内の代謝異常を伴う病状を引き起こし、肥満や糖尿病などを介して動脈硬化症など死亡率の高い疾病の原因となっていることが問題視されています。

こうした疾病の予防のためには、日常の食事の内容に気を使うことが必要なのですが、それが難しい場合の選択肢の一つには、「特定保健用食品※」などを食生活に取り入れることで、これら疾病の原因を遠ざけることも推奨されています(※健康の保持増進に役立つものであり、その機能性を有することが消費者庁によって認められている健康食品)。

日頃より私は食品に備わっている機能性に興味を持ち、さまざまな食品素材を摂取した場合の生理作用について実験動物を使って研究しています。例えば、食事由来の栄養素の吸収を調節することで疾病を予防・改善し得る食品成分にも様々なものがありますが、ここでは特に、大豆由来の加工食品に限って、その作用について研究した成果の一部を紹介いたします。

大豆の機能性成分に注目

大豆は、肉類に比べて脂質含有量が低く、植物性のたんぱく源としても注目されているほか、植物ステロール、大豆イソフラボン、大豆ペプチドなどの機能性成分を含んでおり、特定保健用食品の原材料としても応用されています。

食事由来の脂質の過剰摂取を抑制する作用

実はこのように機能性成分を多く含むことが知られる大豆から調製した豆乳を培地として、乳酸菌などの有用な微生物を培養することができます。この培養液には、幾種類もの乳酸菌が産生した大豆由来の多様な発酵代謝産物(=乳酸菌生産物質)が含まれています。それらの成分のうち私たちの健康を保つための機能を有するものを探し出したいと考えて、さまざまな生理機能を評価しましたが、その成果の一つとして、食事由来の脂質の過剰摂取を抑制する作用についてマウスを用いた実験で見出しています。

乳酸菌生産物質の同時摂取で顕著な抑制効果

動物実験では、私たちが高カロリーの食事を摂った状態をイメージして、マウスにコーンオイルとコレステロールの混合物を強制経口投与しました。経時的に尾静脈から採血して、血液中の中性脂質(トリグリセリド)の濃度を測定することで、どの程度の脂溶性成分が腸管から血液中に吸収されたかを判定しました。

(図1)に示した通り、通常のマウス(青色、コントロール群)では摂取4時間後に血中中性脂肪値が最大値を示したあと、徐々にもとのレベルまで戻りました。これに対し、乳酸菌生産物質を同時に摂取したマウス(赤色、豆乳発酵物120時間群)では、血中トリグリセリド値の最大値は通常のマウスの値に比べて顕著に抑制されています。

(図1)脂質摂取マウスにおける血中トリグリセリド値の経時変化に及ぼす豆乳発酵物の影響
一晩絶食させた雄性ddY マウス(6週齢)に、強制的に脂質(コーン油8ml/kg)を摂取させて、血中のトリグリセリド値を経時的に測定した。コントロール群(青色)では蒸留水を、豆乳発酵物120時間(赤色)では豆乳発酵物(1,000 ml/mouse)を、豆乳群(緑色)では豆乳をそれぞれ脂質と同時に摂取させた。データは8匹の平均値±標準誤差で示した。*: p<0.05, **: p<0.01 vs コントロール群。


最大値を示す4時間目までがもっとも顕著な差を示しているので、この部分の曲線下面積(Area under the curve : AUC)値を比べてみると、通常のマウスに比べて乳酸菌生産物質を同時摂取したマウスではトリグリセリド吸収量の有意な減少が確認されました。

このことから、乳酸菌生産物質を食事と一緒に摂取することで、食事由来の脂質の吸収が抑制されることが示唆されました。一方で、乳酸菌生産物質の代わりに、発酵前の豆乳成分だけを脂質と一緒に摂取したマウス(緑色、豆乳群)でも検討しましたが、トリグリセリドの経時変化についても吸収量についてもコントロール群に比較して有意な変化が見られなかったことから、豆乳発酵物摂取で確認された脂質吸収抑制作用については、豆乳にもともと含有されていた成分によるものではないと推定されます。

乳酸菌生産物質の無限の可能性

このように乳酸菌生産物質の脂質吸収抑制作用は、原料である豆乳には見られない作用であったことから、例えば乳酸菌による代謝を受けて新しくまたは多く生成された豆乳由来の成分が、脂質吸収を抑制している可能性も考えられます。


また、脂質の分解・吸収を抑制する成分またはその成分の働きをサポートする条件が、乳酸菌の代謝またはその代謝産物の働きによって増強されたことで、脂質の吸収を抑制するという機能性が発揮されやすくなったものだと推定することもできます。


多種類の乳酸菌に備わった代謝系によって、既存の成分から新しい成分を作り出すその働きには、無限の可能性が含まれており興味深いと感じます。成分やメカニズムを明らかにすることができれば、培養の条件を調節することで注目した機能性成分をより多く作り出すことも、より高い機能性を持たせることも可能となるかもしれません。


今回の研究で見い出された大豆由来乳酸菌生産物質の脂質吸収の抑制作用は、私たちの普段の食生活にも応用することができれば、脂質の過剰摂取が原因とされる疾病の予防にも役立つことが期待できます。現時点では、本研究で確認された生体内の作用がどのようなメカニズムに起因するものかは理解できていませんが、今後の研究によって明らかにしていきたいと思います。こうした発酵物には、そのほかの機能性も確認されていますので、私たちの健康に役立つ機能やそれを有する成分を見つけ出し、今後も研究成果を紹介していきたいと考えています。

(図2)経時変化から算出した摂取4時間目までのトリグリセリド吸収量に及ぼす豆乳発酵物の影響
トリグリセリドの吸収量に及ぼす影響を評価するために、(図1)に示した経時変化のグラフから、血中の最大値を示した4時間目までの曲線下面積を算出した。コントロール群(青色)の吸収量を100%として、豆乳発酵物120時間(赤色)、豆乳群(緑色)の吸収量の割合を示した。データは8匹の平均値±標準誤差で示した。*: p<0.05 vs コントロール群。

乳酸菌の新しいステージ

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