2019.09.10

乳酸菌業界白書

第100回 乳酸菌業界白書 大手企業が越えられない乳酸菌の壁

本欄「私考欄」も2012年10月に発信を始めて、ラッキーセブンの7年目となる今回を以て第100回を迎えることになりました。

100回記念といたしまして、今回は乳酸菌生産物質から視点をずらし、乳酸菌そのものについて、原料の生産会社、販売の実態、マーケットの状況、そして「大手企業が越えられない乳酸菌の壁」とサブタイトルにも込めた通り、業界の今後の行方を占うようなお話が出来ればと思います。

昨今、世間一般に「乳酸菌はカラダに良い」という漠然とした感覚が広がっていることは、みなさまご承知のことでしょう。

これに伴い乳酸菌業界では、サプリメントのマーケットから、ヨーグルトなどの乳製品をはじめとした一般食品へと市場規模を拡大してきております。

商品の訴求点も、便通改善や免疫賦活、美容、抗肥満、脳機能改善、抗ストレス、睡眠、目の疲労改善などにまで広がって、最近では、化粧品分野への応用も進んでいると業界紙が発表しております。

 

 

ところが、実際にマーケットやテレビコマーシャル、ネット通販等を観察してみても、実態としてはなかなか見付けることができません。

スーパーマーケットなどで、一般食品に乳酸菌を配合した商品を探しても、陳列されているところを見掛けないのです。

様々な訴求点についても、それらを広告宣伝することは法律で認められておりませんので、せいぜい、乳酸菌という単語を商品のパッケージにデザインすることで、消費者の漠然とした「乳酸菌はカラダ良い」という感覚を喚起させる程度のことしか出来ないのです。

とはいっても、ご存知のように乳酸菌そのものでは体感が期待出来ませんから、商品を発売したはいいものの、継続的な販売には繋がっていかないのです。

さらに、乳酸菌が入っていることをタレントが連呼するテレビコマーシャルをご覧になったことがあるかと思いますが、コマーシャルは続けて放送しない限り、売り上げも付いてこない、という広告代理店の声を聞いたことがあります。

 

 

そうした現状ゆえこれまでは、生きて腸まで届く乳酸菌と謳って販売していた業界も、生きた菌を殺した殺菌乳酸菌を生産販売するようになりました。

サプリメントや一般飲料へ添加するのに扱い易い利点があり、乳酸菌の菌数もより多く添加出来るので、多ければ多いほど商品の効果へも期待が高まるはず、といったところでしょう。

こうして、その生産量は現在、大企業も参加してバブル状態を呈しております。

ところが悲しいかな、先に述べた訴求点に係る体感は望むべくもありませんので、このバブルがはじけるのも時間の問題と思われます。

 

 

10年前になりますが、著名なコンサルタントの紹介により、某大手ビールメーカーと商談したことがあります。

ビール会社の担当者の方が常務取締役でもいらして、研究所を含めた全社態勢を敷き交渉に臨み3ヶ月間に渡って折衝を続けましたが、最終的に、販売方法に問題があるという販売担当会社・社長の見解によって交渉成立とはなりませんでした。

実はこの交渉の経緯の中で、会社合併を考えてみないか、と常務取締役からの勧誘までいただきましたが、ポリシーの違いもあり丁重にお断りした次第です。

そのときこの方から、16種35株の複合乳酸菌生産物質は大切にしてください、とアドバイスされたことを良く記憶しております。

大企業においては、たとえ常務取締役の要職にあっても自分の意見を通すことは簡単ではない、という現実を見る機会となりました。

その後このビールメーカーは、みなさまよくご存知で歴史もある老舗乳酸菌飲料会社を吸収合併して、現在は、業界トップの立場で積極的に宣伝販売しております。

しかし販売する商品は、乳酸菌そのものに留まるものであり、代謝産物である乳酸菌生産物質へと進化を果たしておらず、やはり壁を越えることは出来なかったようです。

 

 

この壁について分析してみますと、その背景に、乳酸菌の働きを熟知せずメカニズムを誤解したまま理解している、世界的規模の「乳酸菌信仰」があることがわかります。

したがって、壁を乗り越え進化するためには、乳酸菌の働きに真摯に向き合い、さらに正しく理解して、その信仰から解脱(げだつ)するしかありません。

そうすれば、その先にある乳酸菌生産物質という明るい未来への道が見えてくるようになります。

この乳酸菌信仰という呼称については、「週刊新潮」2017年5月18日号において、バイオジェニックス論を提唱しておられる東京大学名誉教授・光岡知足先生と対談した折、先生からも同意していただいた適切な表現といえます。

乳酸菌業界においては、この壁を早く乗り越えていただき、正しい乳酸菌の姿を認識していただくことを願うばかりです。

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