2020.04.23
私的腸内細菌論
第111回 免疫のカギは腸内環境
新型コロナウイルス禍により、連日、感染者や死亡者が増加の一途をたどっております。
ワクチンや特効薬がないため、もし感染してしまった場合、このウイルスに勝つには、自分の身体に備わっている免疫力に頼るしかありません。
「免疫力アップのためには?」等の情報は良く耳にいたしますが、免疫というのはそう簡単に高めることが出来るものではありません。
しかしながら、ヒトとしてこの世に生を受けた者にとって、その生死を分けるのが免疫力の差であることは、テレビなどで伝えられる情報を見ても明らかです。
日々過酷な現実を見せつけられる今だからこそ、今回、その大切さを理解していただければと思い、免疫力について発信するに至りました。
まず、ハッキリ申し上げられるのは、正常な免疫力は、正常な腸内環境において作り出されている、ということに間違いありません。
健康な腸内環境の主役となるのは、正常な腸内フローラのバランスなのです。
みなさまは常日頃、腸内フローラのために良いとされるバランスのとれた食生活や、腸内環境を考慮した生活習慣を実行しておられるでしょうか?
学術的には、免疫細胞の60~70%は腸に付着していると言われています。
もし、腸に細菌やウイルスが入ってくれば、それら異物をとして腸の中から排除してくれます。
また免疫細胞は、他の身体の部位の細胞とも常に会話し情報交換をしながら、私たちの身体を守ってくれているのです。
例えば今回の新型コロナウイルスは、肺に入って炎症を起こし肺炎を発症します。
このとき、肺の免疫担当であるT細胞やNK細胞等がシステムにならって働き、ウイルスの排除や拒絶の役割を担います。
この免疫システムがスムーズに働けば、未知のウイルスによる肺炎などにも対処可能なのですが、その能力は必ずしも完璧ではありません。
こうした能力を左右するのものこそ、腸内フローラにおける腸内細菌であり、その菌体成分や代謝物質といった形で免疫細胞に働きかけていると考えられています。
すなわち、腸内フローラと腸管免疫細胞が一体となって身体に作用していることで、免疫力を向上させるという仕組みの辻褄が合うのです。
このように、腸内環境は免疫と密接な関係があり、正常な免疫を得るためには、正常な腸内フローラが求められることとなります。
ヒトは生まれたときから、腸内細菌の種類やバランスが決定されていますが、それらは理想的な形ばかりとは限りません。
ですから、自分の腸内フローラに適合した食事のバランスを考える必要があり、そうすることで免疫力も維持されるのです。
当然のことながら、腸内フローラに悪影響を及ぼす生活習慣は避けるべきです。
また、加齢とともに免疫力は低下いたしますが、これは腸内フローラの劣化に起因するといわれています。
一般的な細菌性の肺炎の場合、抗生物質と免疫システムが共同して作用し肺炎が治癒しますが、加齢による免疫力の劣化により、残念ながら生還が果たせなかった例をみなさまもご存知かと思います。
若い人には効く抗生物質も、高齢者には効かないことがあるのです。
免疫の力が弱く、治癒には及ばなかった、というわけです。
ところが、高齢者であっても病から生還される方はいらっしゃいますので、そういう方はおそらく腸内環境が良好なのであろうと、私の仕事柄、納得している次第です。
新型コロナウイルスに感染しても、免疫力で排除出来るか、陽性になり自宅待機や入院を余儀なくされるか、はたまたそこでウイルスと戦って無事に陰性になるか……これらは、ひとえにみなさまの身体に今現在、備わっている免疫力にかかっていることを認識してください。
コロナ禍は、まだまだ続くと考えられます。
コロナに対抗するため、自衛のためにも、今こそご自身の腸内環境を見つめ直してみることをお勧めいたします。