2013.07.23

私的腸内細菌論

第16回 私の腸内細菌

私は助産婦(産婆さん)に取り上げられて生まれ、母乳で育てられました。赤ちゃんの腸内細菌叢(腸内フローラ)の形成には、母親の腸内細菌が関わっていると言われています。また、子供が育つ過程においての「食事」も大きく影響していると言えるでしょう。

第一回の私考欄でも書いていますが、私はアメリカから帰国した伯母に養育されました。働き者の伯母は10代で単身アメリカへ渡り、日本に残した家族の生活を支えるために、お金を貯めました。休み無く働いて昭和14年に帰国しましたが、第二次世界大戦の影響で手持ちのお金のほとんどは没収されてしまいました。
日本人離れした腸内フローラ
それでも前向きで明るい伯母に育てられた私は幸運だったかもしれません。伯母は料理に堪能で、戦争中の乏しい食料事情の中、たまにアメリカ仕込みの洋食を工夫して作ってくれました。


見たこともない鶏の内臓を出して色々具材を詰めて丸焼きにしたものを、大きな皿に載せて近所の子供たちに「さあ、食べなさい」と出してくれたものです。この世で初めて見る料理と、その美味しい味にみんな大喜びをしました。当時の日本には存在しなかったハンバーガーも作ってくれました。そのような食事で育った私は、日本人離れしたフローラであるかもしれません。

さて、一度形成された腸内フローラは一生かけて変化しないと言われておりますが、本当にその通りだと、乳酸菌の研究に携わるわが身で実感します。幼いころに栄養のある食事を取ることができたのは幸運でした(しかし、肉食ばかりでは良くありませんので、ほどほどが肝心です)。
個々の腸内フローラは唯一無二のもの
例えば風邪をひき、強い抗生物質を処方されると便がゆるくなったり、下痢をします。抗生物質は病原菌を退治する一方で、腸内の善玉菌も殺してしまうといわれます。また、大腸内視鏡検査をするときに、大腸を観察するため下剤をかけて大腸を洗いますが、この時に腸内の善玉菌も悪玉菌も洗いだされてしまうといわれます。

しかし、どんな事をしても常在する腸内フローラは大きく変わらないと感じます。私の場合だけかも知れませんが、風邪が治った後に第一番目に出てくる便は青年時代の立派な姿をして、臭いも懐かしい良い便です。これには驚きます。やはり、ヒトの健康を守ってくれているのは腸内フローラだと、腸内フローラは大切にしなければ罰があたると実感するのです。

腸内フローラは皆様の健康のために、しっかりと軍団を組んで守ってくれています。だから、その軍団が困るような生活習慣を避けなければ、「健康で長生き」は難しいかもしれません。腸内フローラのために何が重要か、今まさに、東大名誉教授光岡先生の提唱されている「バイオジェニックス論」にスポットライトが当たる時だと思います。

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