2014.04.14

私的腸内細菌論

第24回 メタボローム解析(代謝物解析)と腸管免疫

今回は、前回のメタボローム解析の続きとして、最近一般的な用語となりました「腸管免疫」と「腸内細菌」の関連について、私の考えをお話しさせていただきます。


ヒトの腸内には腸内細菌といわれる細菌が多く生息し、その細菌叢は「腸内フローラ」と呼ばれています。そして腸内フローラの善玉菌・悪玉菌のバランスが健康を支えているということは、先にもお伝えした通りです。


顕微鏡そのヒトの健康とは切り離せない「腸内フローラ」研究の歴史でございますが、1953年に越智勇一教授指導のもと東大農学部獣医学科で始められ、1958年には理化学研究所に移り、光岡知足先生が理化学研究所の研究員と企業の合同研究チームを編成して研究を推進され、12回にわたる「理研腸内フローラシンポジウム」が開催されました。


残念ながら1991年(平成3年)をもってプロジェクトは終了となり、その後はそれぞれ個々の企業にて研究する方向性になったようでございます。私は今でも「理研腸内フローラシンポジウム」の内容を収録した本を、シリーズで愛読しております。しかし、このプロジェクトの終了は今考えても残念でなりません。この本を読む限り、日本における腸内フローラの研究は、世界のトップクラスを走っていたと感じるからです。



そして近年になり、ヒトの免疫の仕組みが解明されていくに従って「腸管免疫」という言葉が注目されるようになりました。ヒトの免疫の大部分が腸にあって、腸内フローラが関与していることが次々と発表されておりますが、そもそも腸内フローラ、腸内細菌の存在があってこその腸管免疫だと思います。腸管免疫の大事さを更に多くの人に広めるためにも、まずは腸内フローラの研究が極められることが大事なのではないかと考える、今日この頃です。



科学は日々進歩を遂げています。腸内細菌も100種100兆個とされていたのが、分子生物学的手法「16sリボソームRNA系統解析」(RNAの塩基配列による分析)などを用いることで、分離培養が困難な菌種も同定できるようになり、今や腸内細菌は500種以上100兆個であることがわかってきております。


もちろんこのような分析手法は素晴らしいのですが、菌を単離培養して性状を確かめることも忘れてはならないと思います。ひとつ一つの菌の性格を知り、菌と向き合うことの大事さを、私も乳酸菌生産物質の製造を行う中で、実感してきました。



さて最近はTV番組でも「腸」に関する話題が多くなってきたように思います。数年前ですが、NHKの「ためしてガッテン」にて、「腸内環境の良くなる食物」として、納豆、キムチ、漬物、昔からあるヨーグルト、プロバイオティクス菌使用のヨーグルト、を二週間、ボランティアの人達に食べてもらって、その成果を検証する番組があったかと記憶しています。



たしか一番成果が現れなかったのがプロバイオティクス菌のヨーグルト。その理由については番組では深く触れられていなかったようですが、私はその結果に「ガッテン」がいきました。それは乳酸菌そのものではなく、乳酸菌の代謝物がカギだからです。


メタボローム解析私は、腸管免疫を含め、ヒトの健康には腸内細菌の代謝物が深くかかわっているという事を、多くの人に知っていただきたいと考えて、乳酸菌生産物質のメタボローム解析を行いました。
そして現在、乳酸菌生産物質の機能性について薬学系の大学と共同研究を行い、論文、学会発表も予定しております。待ったなしの老齢化社会の健康長寿。一筋の光を灯すことができれば幸いです

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