2015.10.01

私的腸内細菌論

第39回 物理的腸内フローラの考察

ヒトの腸内フローラは、大腸にて形成されていますが、これを物理的に観ると腸内にある発酵タンクで作られていることになります……。


長年、乳酸菌に係る技術を、試験管レベルから大型発酵タンクに至るまで携わってきた者として、今回は、腸内フローラを物理的観点から考察してみることにいたします。と申しますのは、私の知る限り、大腸を発酵タンクと見なし物理的に鑑察してきた学識者がいらっしゃらないと思ったからです。


腸を物理的に観察すると
実はこの観点に立ってみると、腸内フローラを形成させ、そこから代謝産物を産出させる仕組みは、とても理に適っているのです。



腸内にある発酵タンクは、ヒトの一生に渡り連続して休むことなく稼働しなければなりません。それも厳しい条件下での稼働となります。



その条件とはまず、もちろんヒトの体内に収納出来る形状であること、またその位置は体の中でも静かな動きをするところであること、さらにある程度大きい直径の管状の連続培養システムにて入り口から排出口までの所要時間がコントロール可能なこと、が挙げられます。



そして、タンク内の内容物は、酸性でPHも低く善玉菌の発酵のため無酸素であることが求められます。



次に発酵に不可欠なのが、マザースターター(元菌)です。発酵はこれ無しに始まりません。



小腸から流れてきた栄養物をエサにして、まず、マザースターターが増殖をします。それはさらにバルクスターターに増殖していき、最終的に本培養(発酵)となるのです。



このスターターですが、体の外の発酵タンクの場合、共棲培養された乳酸菌のチーム群が用意され、栄養物(豆乳)と同時にタンクに入れられますが、体の中=腸内タンクにおけるマザースターターはどうするのでしょう……。



これは、腸の入り口で必ず添加しなければならないものです。しかも、ヒトの寿命と健康を左右する源となる大変重要なものですから、一生に渡り、一定の条件を満たしたものでなければなりません。



実は、これが腸内フローラの正体なのです。



腸内フローラの正体ヒトが生まれるとすぐ、腸内に入ってきた善玉菌は腸壁と共生状態になります。そのとき、菌と菌も共棲状態になってチームを作ります。そして腸壁に隙間なく分布して、各グループはその人間の一生に渡り健康を守ることになるのです。



<腸内フローラ=お花畑>と比喩されるのは、そのためであって、けして腸内タンクの中で大量に発酵している物質の状態を指した言葉ではない、と認識を新たにしていただきたく思います。



こうして物理的に観ていくと、腸内フローラとその発酵物のメカニズムがわかってまいります。体外の発酵タンクを正常に作動させるためのノウハウは、大腸内の発酵タンクのノウハウと共有できるものがあります。


ただし、体外タンクは人為的にコントロール可能ですが、体内タンクにおける菌のエサとなる食物、生活習慣、腸内環境、ストレス、加齢による劣化等々については、正常な状態を保持する必要があります。



その際、健康長寿のためには、どうしてもそれらを補佐する総合的な物質が不可欠になってくるのです。


劣化していく臓器をなるべく長持ちさせようとするならば、食物や単機能のサプリメントでは不可能であると思います。


劣化を食い止めることを補佐する物質(乳酸菌生産物質)の必要性は、今後徐々に認められていくと私には思えるのです。


長年における研究一筋の人生の成果なのでしょうか、このように物理的な目で観てみると、あるべき腸内フローラの姿がほんのりと目に浮かんでまいります。

戻る

ページトップへ