2016.02.28
私的腸内細菌論
第43回 ポストヨーグルト(その1)
高齢化社会と健康長寿がクローズアップされております。
テレビからは、健康食品に関連するコマーシャル等が一日中目に入ってきます。
その中で昔から知られていて、今も根強い人気のあるヨーグルトについて、本当のお話しをさせていただきたいと思います。

東日本大震災のときに、ヨーグルトの棚がまるで空になってしまったのには驚きました。
数週間して入庫して来ても、お一人一個限りと書いてありました。
やはり嗜好品ではなく、健康のための必需品となっていることを思い知らされた次第です。
そうであればこそ、これからお話しすることは消費者の方々にぜひ知っておいていただきたいことなのです。
最近になって、腸内環境の改善とか、腸内フローラという言葉が当たり前のように使われています。
これらを念頭に置いて、毎日ヨーグルトを食べている方が大半だと思います。
しかし残念ながら、ヨーグルトはそのための効果を発揮することができません。
ヨーグルトを造る乳酸菌は、生きたまま腸に届けても、ヒトが生まれたときから腸に住み着いている腸内フローラ(常在菌)によって排除され、腸内に定着・発育させてもらえないのです。
ヒトの健康を決定するのは、乳酸菌そのものというよりも、乳酸菌が発育するときに菌が代謝し放出する物質であることは学術的にも常識となっています。
つまり、みなさまには初耳であったかもしれませんが、健康的な効果は期待できないのです。

100歩譲って申し上げれば、その健康物質はヨーグルトを製造する過程でわずかに出て来るものではあります。
そもそも、ヨーグルトの製造時間は3~5時間、菌の種類も1~2種類と、恵まれた細菌培養環境とはいえませんが、わずかながらであってもその健康物質を腸内フローラは受け入れてくれます。
ヨーグルトを飲むと調子が良いと体感されている方は、その微々たる物質の影響を感じておられるのでしょう。
このあたりのことは、昨年のNHKスぺシャル「腸内フローラ」取材班の著書「腸内フローラ10の真実」のコラムでも、「菌は腸には住み着かない」(205ページ)と結論付け述べられていました。
問題は、住み着かない限り健康物質は出来ない、ということなのです。
私も長い年月、乳酸菌とお付き合いさせていただきましたから乳酸菌とは一心同体の人生だったと思っております。
本稿は、その立場から申し上げたつもりです。
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