2016.03.02
私的腸内細菌論
第44回 ポストヨーグルト(その2)
前回はヨーグルトの機能性について説明いたしましたが、この産業については専門外の方々も諸説紛々としてる状態ですので、整理しておく必要があると思い、私の経験上からの意見を述べさせていただきます。
まず、腸内フローラ改善のためのヨーグルトの摂り方として、いろいろな種類が販売されているヨーグルトを一週間くらい次々と食べ続けてみて、腸の調子、便の様子等観察し、変化の認められるものをマイヨーグルトとするのが良いとの説があります。
そもそも、ヨーグルトに機能性を考えて造られているものはありません。すべて、味や香り、舌触りが優れている目的を以て造られています。買う人の立場に立つと“おいしいヨーグルト”が売れているからです。


乳酸菌も菌種によって発酵したときの風味が異なりますから、各メーカーとも風味の良くなることを目的として、2~3種の乳酸菌を組み合わせる研究をしています。
また、なるべく短時間で一定のものが出来るようにしませんと、製造経費がかさんでしまいます。
こういった条件を満たす菌の選択肢はそんなに多くありませんので、出来上がったヨーグルトは多種販売されていますが、使用されている菌種は意外と少ないのです。
“自分の腸に合ったヨーグルト”とは、私たちの腸内フローラが抱える菌と相性の良い菌、という希望的な観測によるものと考えられますが、私たちの腸内細菌はチームで存在しています。
万一、相性の良い菌と遭遇出来たとしても、チームからは排除されてしまうのです。
仮にあるヨーグルトを食べ腸や便に変化があったとすれば、たまたま腸内環境がその期間に食物など他の要素により変動したからなのです。
次に、ビフィズスヨーグルトが腸内ビフィズス菌のエサになるという通説の誤解について説明いたします。
ビフィズスヨーグルトは、ミルクを培地にして造られています。
ビフィズス菌が生きたまま大腸まで到達したとします。
しかしやはりビフィズス菌は、腸内フローラの菌チームからは排除され発育・定着出来ません。
培地のミルクは、腸内のビフィズス菌のエサにはなりません。
これは試験管の実験で実証されています。
ただし、ビフィズスヨーグルトを製造する際にその増殖過程にて、わずかに代謝産物を放出します。
その産物であれば、腸内フローラは受け入れてくれます。
エサとしてではなく、バイオジェニックスとして、です。

最大の要因は、乳酸菌、ビフィズス菌の共棲培養をする技術がないからです。
そして、肝心のヨーグルトの風味と共棲培養が両立しないという問題点もあります。
しかし、解決方法はあります。
バイオジェニックスの代表格の乳酸菌生産物質は、微量でも多大の機能性を有しております。
ですから、風味を損なうことなく微量に添加することで目的は達成されます。
残る問題は、そこまで先見の明があるヨーグルトメーカーが存在しているか、です。
しかし、現在進行中である機能性表示が可能な食品の法律が確立されれば、話は別になってまいります。
機能性のエビデンスを取得していれば、前途は自ずと開けてくるでしょう。
乳酸菌生産物質のエビデンスを取得しておいて良かったと、改めて思っておる次第です。
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