2017.06.21

私的腸内細菌論

第64回 共棲培養というすぐれもの

co-culturing共棲培養という弊社独自の培養法について、できるだけ多くのみなさまにご理解いただくきたく、ページをリニューアルし、さらに専用のページを設けることにしました。
▼リニューアル:「共生培養」
▼新設ページ:「同定」


乳酸菌生産物質を正しく評価するには、避けて通れない大切な事象ですから、ぜひお読みいただきたく思います。


と申しますのも、大学の偉い先生方におかれましても、今まで「共棲培養」の実態やメカニズムについて、質問された方が誰一人おられないような状況を、歯痒く感じるからなのです。


先生方の頭の引き出しの中に存在しない概念なのか? 価値観として認められないのか?……その理由は不明です。


そこで、考えられる要因を私なりに考えてみました。


複数の菌種を同じ培養液の中で培養するときに、適当に菌種を選び混合し行うことを、混合培養と申します。


そして、一度の培養に留まらず、菌のための栄養物を加えながら、何度も培養を繰り返していくと、最後に淘汰された一種類の菌が残ります。


入門したての研究者は、これが細菌学の常識であると直属の先生から教えられるので、その後も専門知識として頭の中に刻み込まれているはずです。


プロバイオティクスにおいても、一種類の菌の性状を見極めるには、これが基礎となり、多種類の菌が混在した中から一種類を取り出す操作(これを「単離」といいます)を行い、他の菌が混入しないよう、培養を繰り返します。


これを純粋培養と申します。


これが現在の学問の終着点となっているのが現状ですので、残念ながら共棲培養という“引き出し”は、細菌学の世界には存在し得ないようです。


仮に、共棲状態ではない単なる複数の菌を同時に培養した場合は、それは共棲培養とは呼べず、混合培養と表現します。


そして、一種類の強い菌が残ると教育されるのです。


翻って、私たちの腸内フローラを形成している腸内細菌の生きざまは、どうでしょうか?


彼らは生まれたときから、チームを編成して腸内に棲みついています。


そして腸内では培養が繰り返し行われていますが、菌のバランスは保たれています。


これは決して純粋培養ではありません。


明らかに、菌の共棲状態が確立している共棲培養なのです。


先生方は「人と共生している」と簡単に片付けておられますが、ここが見逃してはいけない重要な点なのです。


先代の正垣所長はこの共棲状態に着目したのです。


そして、これを何とか体の外でも再現出来ないものか、と研究を開始しました。


おそらく、世界で初めての着想であったに違いありません。


かつてNHKスペシャル「腸内フローラ・解明!驚異の細菌パワー」も言ったように、腸内フローラの作る物質が健康を左右すると正垣所長が思ったかどうかはわかりません。


しかし、確かにそのとき、共棲培養の種は蒔かれたのです。


そして永い年月をかけ、正垣所長は、乳酸菌に関する感性と生来の直観力により、菌の組み合わせに成功したのです。


私が研究所に入所した当初は、いきなり菌の培養の現場で複数の菌が共棲しているところに直面させられました。


大学に入学し細菌学の入門として行うような、多種の菌の中から一種を選ぶ純粋培養ではありませんでした。


つまり現在の教育方法とは正反対のやり方でしたが、実は「共棲」という感性を養わせる方策だったのです。


かく言う私も、共棲培養の基本とするために、後になって純粋培養を行っているのは言うまでもありません。


乳酸菌が本当に私たちの健康に寄与できるチカラを得るには、共棲培養の必要性があり、その操作を行うには、共棲に関する感性が身に沁みついた者でなければその適性がないと、この歳になって感じる次第であります。


光岡先生は先日の週刊新潮主宰の私との対談時に、共棲培養について、16種35株にいたる経緯を質問されました。


腸内細菌に取り組んできた経験者として、私から詳細にご説明申し上げたところ、「それで解った、16種35株で必要十分です」と納得していただくことができました。


今さら他の識者の方々にも「共棲培養」の“引き出し”を養っていただこうと思ってはおりません。


しかし、もしこれが欧米の識者に認知され日本へ逆輸入されるようなことがあったときは、学術界も業界も共棲培養の価値を見直さざるを得ないのでしょうが、それではあまりにも寂しいではありませんか。

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