2017.11.09

私的腸内細菌論

第72回 マイクロバイオータ

micro biota「腸内フローラ」という言葉は既に世間で一般的に使われるようになってまいりましたが、学術界では研究の最前線において「マイクロバイオータ」という呼称が出現するようになってきました。


この言葉は、ヒトの腸内などで共生している膨大な数の微生物の総称とされています。


腸内、皮膚、口腔などで、生体に棲み着いている微生物群のことです。


そしてその微生物群の持つゲノム情報の総体を、学術用語で「マイクロバイオーム」と呼称しております。


ゲノムについては、みなさまもご存知の、DNAのすべての遺伝情報のことで、親の生物学的な特徴を子供に伝えるためのDNAの構成の特定の部分を示しています。


例えばゲノム創薬といえば、ゲノム情報をもとにして薬を作ることです。


このように、ヒトの健康を考えるときにも、これからは遺伝子が主役になる時代がやってきたことになります。


マイクロバイオータ研究の進化とともに、これから生まれてくる赤ちゃんの平均寿命が100歳になるといっても何の不思議もない時代になったといえましょう。


letterなどと考えていると、先日、こういった研究の最前線におられる国立大学の薬学総合研究科の准教授の方から、次のような書簡が私宛に寄せられました。


その一部を、ご本人に了解も得られましたので、特別に本欄に引用させていただきます。






……この度、御社の「乳酸菌生産物質」に関する参考資料等をご送付してくださり、厚く御礼を申し上げます。


先生が長年に渡り「乳酸菌生産物質」の生産系の確立、安全性や有用性の探求などにご貢献されてきたことに深い敬意を表します。これらの研究成果は必ず人々の健康に大きく役に立つと信じております。私は大学で微生物学と免疫学を教える身として、先生がご強調されてきた「生産物質」の重要性について十分認識しております。また、最近の様々な研究により、先生のお考えの正しさが証明されてきております。


一方、近年のメタボローム等のオミックス技術の進歩と共に、次世代遺伝子解析技術の普及により、腸内フローラの全ゲノム解析も進められており、今後腸内細菌に関する研究成果が爆発的に増加してくると予想されます。私は究極的には、腸内フローラは薬の工場に変えられる技術や、体外培養により活性成分または薬を大量に生産できる技術などが確立される日が来ると信じております。近年腸における免疫調節機構が癌、循環器や神経疾患など様々な疾患に深く関わり、腸内フローラの二次代謝産物は極めて重要な調節的な役割を果たしていることが判明され、今後もこれらの研究がさらに大きく発展されると思われます。


御社と田辺との共同研究成果及びメタボローム解析結果について大変興味深く拝見させていただきました。私は現在癌細胞の増殖制御に関わるタンパク質のエピジェネティック制御分子機構や細胞のオートファジー(昨年の大隅先生のノーベル賞生理学賞対象の研究)誘導機構等の研究も進めており、これらの研究をベースにした「生産物質」の調節活性及び作用機構の探索研究が可能と考え、更に免疫制御への関与とその作用機構の研究や、抗ウィルス(インフルエンザやヘルペスウィルス)活性の探索研究等の研究へも展開可能と考えております。……


ご覧の通り、専門用語が頻出するため、どなたにでもわかる内容ではないとは思われます。


しかしこの方が、乳酸菌生産物質について学術界で最大の理解者であるということ、ひいては、それはご自身の研究が「生産物質」そのものであったためと理解することはできます。


この手紙は、学術界からの一筋の光明といえます。


このような最先端の現場で活躍される理解者が、より多く出現されることを心から願うばかりです。

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