2018.06.13

私的腸内細菌論

第80回 プラセボと自然治癒力

placeboプラセボとは、みなさまご存知のとおり、新薬を創る際、その治験薬の効果を調べるため、臨床試験に組み込まれるシステムです。


プラセボの方法は、薬として実際は効き目のない錠剤やカプセル剤を、本物の薬として罹患者に服用させるというものですが、これで半数くらいの人が治ってしまうことがあります。


クスリをしっかり飲んだ、きっと良くなるに違いない、という安心感が、ヒトの自然治癒力を引き出すと見なされ、ヒトの体には不思議な作用が備わっていると説明されています。


そして、この現象が一般に「プラセボ効果」と定義付けられております。


すべての現象には原因があって効果があります。


そのメカニズムを明らかにするものこそが科学です。


現代は生命科学の進化により、未知のメカニズムが次々と解明されている時代です。


プラセボ効果を、単に「自然治癒力」だけで片付けてよいものでしょうか?


先日放送のNHKテレビ「ためしてガッテン」で、人に親切にするという好意によって、自分の体の中の炎症を抑えるという変化が見みられた、というカリフォルニア大学の研究発表を紹介していました。


炎症が長く続くと、筋肉や血管にダメージを与え筋力が衰えたり、動脈硬化から脳卒中や心筋梗塞などの病気になり、最終的に寝たきりになるリスクが高まります。


connect with people老後に寝たきりにならないよう運動をしたり、生活習慣病の予防やお酒を控えるなどの健康法が推奨されていますが、アメリカで発表されたこの研究によれば、意外や意外、それらの方法よりも「人とのつながり」を持つことの方が、長寿には良い効果があったということです。


そして、毎日熱心に運動している人の方が、運動嫌いの人より寝たきりリスクが高いと判定されたのです。


みなさまも驚かれたことと思いますが、番組中でも日本のお年寄りの夫婦において、毎日かなりの運動をされているご主人よりも運動されていない奥様の方が、健康の検査をしたら、はるかに健康的という現実が放送されました。


ただしこれにはカラクリがあり、奥様方には、人とのつながりがあった、というわけです。


弊社における乳酸菌生産物質のメタボローム解析の結果では、腸内細菌が作り出す代謝物質の中には、自然治癒力と関わりがあると思われる物質がいくつか散見されます。


腸内細菌の細胞が作り出す代謝物として確認されるくらいですから、ヒトの細胞においても、何らかの神経的な作用により代謝された物質が炎症を抑える作用をしても少しも不思議ではありません。


「人とのつながり」を大切にして、人に親切にすることで、自らの体の細胞から長寿につながる代謝物を作り出すことこそ、これからの高齢化社会の生活形態に必要不可欠であることがお分かりいただけると思います。


プラセボ効果は科学で裏付けされるべきものであって、ヒトの持っている大切な機能であり、決して不思議の世界のものではないということです。


この未知なるメカニズムの解明に、乳酸菌生産物質が何らかのヒントになればと思っている次第です。

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