2018.09.03
私的腸内細菌論
第84回 腸内細菌と乳酸菌の責任
「腸内細菌叢(腸内フローラ)の改善には、乳酸菌。」
このことはみなさまには周知されてきました。

結論として、一般マーケットで販売されている乳酸菌商品の実際の効果は期待通りでない、ということはみなさまご存じのことと思います。
その際、乳酸菌に責任があるのか、といった命題を立てるならば、真実は、乳酸菌を使って商品を製造しているところに責任があって、乳酸菌そのものに責任はない、ということになります。
その理由は、乳酸菌がそのチカラを発揮するには、37℃下の栄養物たっぷりの環境で、液体培養が行われ菌が目覚めどんどん増殖していくとき、という条件が求められるからです。
その際に菌体から放出される物質にこそチカラがあるのであって、菌体そのものは無力だからです。

キレイなピカピカの菌体は、何もできないのです。
そして、「生きて腸まで届いて、増殖が始める」と思っておられる方には、それに関する論文は一報もない事実をお知らせしておきます。
最近は死菌体といって、乳酸菌を増殖させ熱処理して死活させた製品があります。
生きた菌ではなく菌の数も数兆個と多いことから、商品に添加するには好都合なのですが、菌が増殖するときの代謝物がキレイに洗い流されていて、チカラを有する肝心要の物質がありませんので、「おなかの調子を整える」作用は期待できません。
ただしそれら死菌体は、私たちのカラダの免疫調整を行っている小腸下部にあるパイエル板を刺激する分には恰好な大きさのため、免疫調節には有効といわれています。
しかしながら、腸内フローラが正常であることがパイエル板を正常に作用させるための重要な条件になっていますので、そのことからも死菌体に腸内環境改善の役割を期待するのは馴染まない、と言わざるを得ません。
実際に死菌体を添加する食品業界においても、整腸作用については機能性表示に足りる論文がないため、消費者庁への機能性表示の届け出は不可能な状態です。

責任は、乳酸菌をどのように活用するかに、かかっているのです。
乳酸菌が増殖する過程において放出される乳酸菌代謝物(乳酸菌生産物質)だけが、その責任を果たしているということになります。
それも、腸内細菌叢(腸内フローラ)の共棲培養状態に限りなく近い状況で、人工的に整えられた環境において、製造されたものである必要があります。
最近は、何につけても社会的責任が問われる時代となりました。
メディアにおける大手企業における乳酸菌の扱いについても、責任の取れる公正な広告を望むところであります。
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