2018.12.25
私的腸内細菌論
第89回 乳酸菌の落とし穴
今年も残り7日となり、本欄も89回目となります。
そこで今年の総括として、乳酸菌を正しく理解していただくため、乳酸菌サプリメントの盲点となっている部分に焦点を当てご説明すると同時に、サプリメントメーカーに対しては、本当に健康に寄与する商品作りのためのキーポイントを提言してみようと思います。
今回の標題に「落とし穴」と入れたのは、乳酸菌というと誰もが健康に良いものと信じる心が働きますが、そこには重大な盲点があることをみなさまご存知ないからです。
乳酸菌が健康に働きかけるためには、その菌が発育・増殖することが絶対条件です。
その発育という働きが存在していないのが、大多数の生きた乳酸菌サプリメントです。
それらの商品の主原料は、大手乳酸菌メーカーの製造した菌体を使用しています。
当然のことですが、商品化する際には、その乳酸菌が健康に関与しているというエビデンス(科学的根拠、論文等)があってのことでなければなりません。
ところが、です。
そのサプリメントは摂取しても、エビデンス通りの効果は期待出来ません。
なぜでしょうか?
一般にはエビデンスを裏付ける論文が存在しますが、その論文の構成は、乳酸菌が発育・増殖したときに得られる菌体と発酵液の効果から成り立っているものの、メーカーが販売している原料としての乳酸菌は、きれいに洗われた菌体だけで、効果の主体となる発酵液は不純物として排除されているのです。
いわば製造工程において大切なものを捨ててしまっているのです。
これでは、エビデンスは無きに等しく、私たちの健康に寄与するような期待は持てません。
ところが、販売者も消費者もこの真実を知りません。
まさに「落とし穴」なのです。
そこで、生きた乳酸菌メーカーの方々には、効果が期待できる乳酸菌サプリメントのあり方を提言しておきます。
きれいに洗われた乳酸菌菌体をヒトが摂取しても、発育・増殖する可能性はゼロです。
ですから、製造工程を見直して、乳酸菌を生産する際に発酵液を排除しないで製品化することが肝要です。
そうすれば、エビデンスに基づく商品となるでしょう。
昨今、安価な乳酸菌サプリメントにするため、原料価格のコストダウンが求められていますが、機能性が失われてしまっては本末転倒になります。
いくら多額な広告宣伝費を使ってCMを続行したとしても、体感が得られないものであれば、いずれその終末がやってまいります。
商品が定着し競争に生き残れるかどうかは、誰が一番先に「落とし穴」の存在に気付くかにかかっているといえます。
現在までロングセラーとなって長い年月リピートされている商品には、必ずエビデンスに基づく体感があります。
この私考欄を読み続けている方は、乳酸菌を進化させた乳酸菌生産物質を使用すればこの問題は解決できるとお分かりいただけるかとは思いますが、世の中すべてがそうとは限りません。
研究者レベルでも、理解しておられる方は意外と少ないのが現実です。
ご自身の手で長い年月、乳酸菌の培養に従事された方なら理解できる真実ではあるのですが。
さて本欄もこれが本年最後の更新です。
本年もご愛読いただき、ありがとうございました。
12月になって海外技術誌、スイスの科学ジャーナル「Nutrients」に乳酸菌生産物質の作用機序が掲載されましたが、これに限らず来年は、より多くのエビデンスをご報告出来る年になりそうです。
弊社の目標は、世界の人々をより健康にすることにあります。
私も12月19日で78歳になりましたが、おかげさまで心身ともに、いたって頑健でございます。
みなさまもどうぞ良い年をお迎えください。