大澤教授・特別対談「食の機能性と微生物パワー」(4)抗炎症・抗酸化のバランス

大澤俊彦 氏(愛知学院大学心身科学部・人間総合科学大学人間科学部 特任教授)

大澤俊彦教授

日本抗酸化・機能研究会理事長、日本食品・機械研究会会長、日本食品安全協会理事など多数。
日本農芸化学奨励賞受賞、日本農芸化学会賞受賞、飯島食品科学賞、
日本ベンチャー学会会長賞、日本食品科学工学会功労賞授賞。
農学博士。

大澤教授の略歴

全て、酸化と抗酸化のバランスなんです

《大澤教授》運動というのは脂肪が燃焼され健康には良いけれども、筋肉には良くない、という状態に対しても、抗酸化や抗炎症物質が重要な役割を持つでしょう。

-我々の身体の中でも、大豆を食べればそういった有用な物質が出ているのかもしれませんね。

《大澤教授》大事なことですね、我々の身体の中では抗炎症反応がいつも起きていますから。

大澤俊彦教授,対談,インタビュー

皮膚癌のことを話しますと、昔は紫外線によって皮膚表面の細胞の遺伝子が変異することが一番の原因だと言われていました。

今は、「光老化」というものがすごく注目されています。

表皮でなくその下の細胞まで透過していく波長の長い紫外線がダメージを与える、皮膚癌ではないんですがシワ、たるみを引き起こすと。

光が当たって炎症反応が皮膚の下の層で盛んに起きてしまう、それを防ぐのもやはり抗炎症・抗酸化。

脳もそうです、脳にはDHAが多いんですがこれも酸化しやすい。

アルツハイマーの原因はアミロイドβタンパクの凝集。

αシヌクレインを凝集するとパーキンソン病……というように、タンパク質が凝集していく、これが酸化であるという考え方が昔からあるんです。

全て、酸化と抗酸化のバランスなんです。

これが酸化の方に傾くといろいろと症状が出てくる、炎症反応もそうである、身体を守るためにウイルスを殺す活性酸素も多すぎれば炎症反応を引き起こし、細胞傷害の原因となる。これが悪性化の原因だろうと考えられています。

だから、抗炎症化でへたに細胞を傷付けてしまってもしょうがない、炎症反応を抑えつつウイルスを殺す作用は残すよう、うまくコントロールしていくことが大事なんです。

発酵させて出来た物質、これが大事

-人間にもともと備わっている、不老“腸”寿のパワーは素晴らしいですね。

光英科学研究所,対談,インタビュー

《大澤教授》乳酸菌生産物質について書かれたご著書(『不老“腸”寿』)で、僕が共感出来るのは、物質が大事である、という点です。

以前に、酵素栄養学というのはあまり賛成しないと話したことがあります。

なぜなら、酵素を食べても身体の中では酵素にはならない。

むしろ、酵素を通じてこうした生産物質を増やすのが大事であり、乳酸菌の酵素を利用して大豆を発酵させて出来た物質、これが大事だと。

-まさに、乳酸菌「菌体」から「代謝物」の時代になりつつある、といえるのではないでしょうか。

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インタビュアーより:対談を終えて

この度、農学博士であり愛知学院大学特任教授の大澤俊彦先生を当社アドバイザーにお迎えいたしました。

大澤先生はフィトケミカルの第一人者で、チョコレートの原料「カカオ」に含まれるポリフェノールの抗酸化作用をはじめ、多様な食品機能性成分を世の中に生み出した方でいらっしゃいます。それらの機能性成分は、菓子などの食品・生鮮食品・健康食品・サプリメント等さまざまな形で、私たちの生活の中で多く活用されています。

対談中にもございますが、今日の日本人が健康食品やサプリメントを摂取するようになったのはそれほど昔の話ではなく、今では当たり前のように思える健康常識も、大澤先生をはじめ、研究者の方々の絶え間ないご研究により、生活者である私たちが知ることができています。改めまして、大澤先生に深く感謝申し上げたいと思います。

食品機能について、特に発酵によって生み出される成分の素晴らしさについて、大澤先生はいつも新たな視点からアドバイスをしてくださいます。そして、私たちが今いちばん知りたいテーマについて分かりやすく解説いただき、学びを深める機会もいただいております。

今後も食品と健康の関わりについて、微生物の発酵パワーがうみだす機能性成分の可能性について、大澤教授にアドバイスをいただきながら、当社といたしましても、新たな知見を生み出す一歩としていきたいと思います。これからも対談を重ねていく予定でございます。みなさま、次回の対談もどうぞお楽しみに!

大澤教授対談インタビュアー

大澤俊彦教授(写真・中央)
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株式会社光英科学研究所 代表取締役会長 村田公英(写真・右)
株式会社光英科学研究所 代表取締役社長 小野寺洋子(写真・左)

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