発酵による二次代謝産物
乳酸菌生産物質が選ばれる「理由」4
ヨーグルトに代表される乳酸菌製品。その多くが、コストパフォーマンスなどの面から、4時間程度の発酵によって製品化されていることは、実はあまり知られていません。俗に、ヨーグルトがプロバイオティクスと称されるのも、乳酸菌の生菌を約4時間から12時間発酵させた場合に生じる「一次代謝産物」しか存在しないところが大きく、このことが、ヨーグルトの機能性をプロパイオティクスの領域から抜け出せないものにしているのです。
未だに解明されていない「二次代謝産物」
しかし、乳酸菌生産物質はというと、その多種多様な機能性のメカニズムの解明が、いまだ「アンノウン・ファクター」のままです。そこで、近年では発酵学の分野において提唱されている「二次代謝産物」といわれる概念が、乳酸菌生産物質の持つメカニズムのカギを握るのではないかとの意見も出され、学術界では二次代謝産物の全容解明が期待されています。
(図)細菌の増殖曲線(生菌数・総菌数と代謝産物)
二次代謝産物とは、生産菌の生育がほとんど停止した後に発酵によって産生される代謝産物のことをいい、抗生物質を合成する場合に産生されることが多いのです。(図)は通常の細菌における増殖曲線を示したグラフです。
ヨーグルトをはじめとする乳酸菌の生菌の場合、たとえ生菌の菌数が最も増殖する12時間程度発酵させたとしても、1gあたり108個ぐらいの菌数を含有させることが精一杯なのです。この間に産生されるのが一次代謝産物で、これがプロパイオティクスとしての働きをすることになります。しかし、(図)の抗生物質ぺニシシリンの例にあるように、20時間ほど発酵させた時点では、二次代謝産物が生じてくるのです。
(表)乳酸菌の活用区分
現在のところ、二次代謝物質については「神秘的な」とも形容されるように、学術界でもその機能性についてはほとんど解明が行われておらず、論文発表もされていません。その一方で、乳酸菌生産物質をはじめとする機能性食品は、穏やかで総合的な保健効果を有し、安全かつ永続的に使用されるものが求められているのは、言うまでもありません。従って、二次代謝産物のメカニズムが解明されれば、食品成分の機能研究に大きな影響を与えるということがいえるため、二次代謝産物の今後の機能解明には研究者の大いなる期待が集まっています。