2024.06.26
身近雑記
第164回 乳酸菌の正体と腸内環境
今年も異常気象が続き、やっと全国的に2週間遅れの梅雨入りとなりました。
梅雨寒(つゆざむ)という季語ご存知と思いますが、この時季は雨が降り続き、思ったより朝夕冷える日が多く、若い人ならいいのですが免疫力の低下したシニアにおいてはいわゆる夏風邪を引き重症化して大事に至ることがありますので、こまめにエアコンの調整や着衣の工夫をされることが肝要かと思います。
さて、本題に入りましょう。
先日、ある友人から「NHKのあしたが変わるトリセツショーにて、腸内細菌育菌術を放送するので見てごらん」とメールが届きました。
皆さまもご覧になった方が多いと思います。
内容については、腸内細菌と食事について一般的に知られている事柄であり、腸内細菌を育菌するには食物繊維を重点的に食事に取り入れることが大事、という結論となっていました。
皆さまもご存知の通り、腸内細菌の主役は善玉菌である乳酸菌です。
そして私は63年間に渡り乳酸菌生産物質の研究に携わり、長年、乳酸菌とは良い友達として生活を共にしてきたと自負しております。
そこで主役である乳酸菌の働きや、乳酸菌が醸し出す諸々の事象について、私の考察を含め、何回かにお話を分けて皆さまにお話してまいりたいと思います。
まず第1回目は、実験中に目視した乳酸菌の食物繊維の豪快な食べっぷりについてお話したいと思います。
今から20年ほど前のこと、私は乳酸菌生産物質を製造する際に元菌(種菌)となるスターターの試験をする作業をしていました。
普段は培地として豆乳を使用するのですが、理由があってその時は「おから」を含んだ豆乳を使いました。
つまり食物繊維が混在している培地です。
すると、試験を始めてしばらくすると、ある変化に気付きました。
培地の粘度が発酵前と比較して格別に高くなってきているのです。
そして時間経過と共にどんどん粘度が高くなり、試験が続けられなくなり、試験管から別の試験管へ培地が移せなくなるほどになりました。
試験を始めて2時間半位経過していましたが、普段の豆乳だけの実験では、ここまで早いスピードで粘度が高くなることはありません。
乳酸菌にしてみると、豆乳の栄養物の中に「おから」という食物繊維が混在しているのですから、大好物の「おから」をエサにしてどんどん増殖し、そして代謝物として放出された有機酸等が培地の粘度を高めたものと思われます。
食物繊維のチカラを目の当たりにして、まさに「目から鱗」でした。
そして、その時の実験に用いたのも、1種類の菌ではなく選び抜かれた16種の菌でした。
培地中の「おから」を16種類がみんなで協力し合って食べたのでしょう。
(ここで1種類の単菌で試験をしてみるというテーマも考えられますが、弊社は複合菌を基本として開発を進めており、あえて単菌の試験は行っておりません)
お話が戻りますがNHKのトリセツでは、諸々の理由により劣化した腸内細菌を育菌して元気にするには、食生活を食物繊維中心にすることが最も有効であると結論づけられていました。
私も20年前の実験でその通りと感じていますが、腸内細菌である乳酸菌の立場からすると、腸内環境が劣化している状況によっては、いくら腸内に食物繊維や栄養物を与えられてもそれに応えられないという現実があると思います。
そして、食物繊維を食べても腸内細菌のエサにはなっても、菌そのものの復元は望めないということです。
私の長年の経験からすると劣化が進んだ菌はいくら栄養を与えても活性が戻ることはありませんし、かといって腸内細菌を体外から補充しても長く定着するのは困難です。
腸内細菌は人間が生まれた瞬間からおなかの中に棲みつき、一生を共にする存在です。
自然の摂理から見ても、食物繊維の摂取や菌そのものを摂るだけに頼るのは、劣化が進んだ腸内細菌の育菌は不可能に近いのではないか、と私は考えています。
もちろん、自身の腸内細菌と上手に付き合い、100歳長寿のための腸内環境であるためには、長年に渡る食物繊維を中心にした食生活が必須です。
そのためには早目の食生活の改善がその人の健康を決定するといっても過言ではないでしょう。
次回からも、私の長年の友である「乳酸菌」本当の働き、正体についてお話させていただきます。
どうぞご期待ください。
近年は健康食品市場だけでなく、一般的にも「健康には乳酸菌」という概念が定着しつつあります。
しかし、人の健康に役立つのは乳酸菌そのものだけではなく、その代謝物である「乳酸菌生産物質」がより重要です。
この本には、16種35株のビフィズス菌を含む乳酸菌の共棲培養技術のノウハウや、「乳酸菌生産物質」の商品化の知識など、私の視点から見た「乳酸菌生産物質」に関する情報が余すところなく盛り込まれております。
ぜひ第1巻に続き、第2巻もお手元で開いていただければ幸いです。
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